神秘的な紫に込められた想い ― アメシストという宝石の物語

アメシストは、どこか静けさを感じさせるような紫色の宝石です。光の加減や見る角度によって、深い葡萄色にも、ほのかに青みを帯びたラベンダー色にも見える不思議な石。その美しさに、つい時間を忘れて見とれてしまうことがあります。

この石には、古くから“癒し”や“冷静さ”というイメージがつきまとっています。ギリシャ神話では、酒に酔った神がアメシストという少女を石に変えてしまった、という話もあるくらいで、昔の人たちはこの石を“酔いを防ぐお守り”として身に着けていたそうです。今でも「冷静な判断力を与える石」として、ビジネスシーンでのお守りにされることもあるんですよ。

でも、アメシストの魅力は、そうした「意味」だけにとどまりません。

見た目の美しさはもちろんですが、手に取ってみると、そのひんやりとした感触に心がスッと落ち着いていく感じがあります。まるで、慌ただしい日常の中にぽっかりと空いた静かな空間に、そっと連れて行ってくれるような…そんな感覚です。

天然のものは、内側に小さな結晶のような模様が入っていたり、ほんのり色のグラデーションがあったりして、ひとつとして同じものがないのも魅力のひとつ。「この子にしかない色味」と思うと、自然と愛着が湧いてきます。

ジュエリーとしてはもちろん、原石のままでも美しいアメシストは、インテリアとして飾る人も多いですよね。太陽の光が当たると、ゆっくり色が変わって見えることもあって、一日の中でもさまざまな表情を見せてくれます。

心がざわざわしているときに、ふとアメシストに目をやると、何だか気持ちが落ち着いてくる…。そんな、静かなけれど確かな力を秘めた宝石。それがアメシストです。

返回網誌